一般的な土地取り引きを見てみますと、売主と買主が売買契約を締結し、買主が売買代金を支払って、所有権の引き渡しを受け、その旨を登記することで成立しますが、とくに農地の場合は、一般的な土地取り引きのルールのほかに、さらに農地法などの法律で定める要件を満たす必要があります。
1 農地法による農地等の取得
- 新しく農業を始めるには、農地の取得が基本で大切なものになります。
農地を買う場合や借りる場合は、農地法の許可を受けることが必要になります。
農地法の許可を受けないでした売買や貸借などは、法律上の効力がありませんので登記もできないし、また法律による保護も受けられません。 - 取得しようとする農地をどのように使うかによって、農業委員会に対して次のような申請をしなければなりません。
耕作するために農地を取得する場合 → 農地法第3条許可申請
取得農地を住宅や畜舎などの用地に転用する場合 → 農地法第5条許可申請 - では新規就農者が農地を取得する場合、農地法ではどういう時に許可されるでしょうか。許可できる場合の主なものを紹介します。
農地法3条許可の要件
- 農地の全てを効率的に利用して農業経営を行うこと【全部効率利用要件】
- 取得後の農地面積が50aを超えること【下限面積要件】
- 個人の場合は農作業に常時従事すること【農作業常時従事要件】
- 法人の場合は農業生産法人であること【農業生産法人要件】
- 周辺の農地利用に悪影響を与えないこと【地域との調和要件】
注1 2の【下限面積要件】は、市町村によっては20a~40aの区域を定めている場合もあります。
注2 3の【農作業従事要件】及び4の【農業生産法人要件】については、解除条件付きで農地の貸し借りが認められている農作業常時従事者以外の個人及び農業生産法人以外の一般法人の場合は、この2要件は除かれているが、一般法人にあっては、業務執行役員の1人以上が耕作等の事業に常時従事することが求められます。
2 農業経営基盤強化促進法による農地等の取得
- 農業経営基盤強化促進法では、地域の自主的な土地利用調整を尊重し、市町村が農用地の農業上の利用増進を図る観点から、地域農業者(新規就農者も含まれます)の農用地の売買、貸借などの意向を取りまとめし、農用地利用集積計画(集合的な権利の設定、移転計画)を作成します。
- 市町村で作成したこの計画を農業委員会の決定を経て公告した時に、その計画の内容に従って売買や貸借等が行われたことになります。
- この計画によって、売買、貸借等が行われた場合は、改めて農地法第3条許可を受ける必要はありません。また賃貸借の法定更新の規定は適用されませんので、存続期間の満了で自動的に貸借関係が終了することから、解約のための煩わしい手続きは一切不用です。