がんばる農業者紹介

【がんばる農業者紹介 No.7】法人化で月給制も実現   創意工夫が農業の楽しさ

近藤 裕一(こんどう ゆういち)さん

現住所:徳島県三好市井川町
経営品目:トマト・にんじん・キャベツ・ブロッコリー・白菜・ほうれんそう
経営面積:6ha

「つくる」ことから「売る」ことまで考える

就農のきっかけを教えてください。

はくさい

もともと小さい頃から家業である農業を継ごうと思っていました。それで、徳島県立農業大学校を卒業後、恩師の紹介で神山町にあるファーム神山へ修行に行ったんですね。ファーム神山は農業法人だったので、法人化のメリットや経営に関する勉強ができたのは、今の自分につながる貴重な経験でした。2001年にうちを法人化したのも、その影響が大きいと考えています。

 

つくっている作物はどんなものですか?

以前は花を栽培していたのですが、今はいろいろな野菜をつくる方向へとシフトしています。具体的には、トマト、にんじん、キャベツ、ブロッコリー、白菜、ほうれんそうといったところですね。あまり珍しい野菜やハーブのようなものはつくりません。常にお客さんが必要としている“定番の野菜”を最高のタイミングで供給するにはどうしたらいいかを意識しています。

独自の農法や工夫にはどんなものがありますか?

作業場

うちは法人化しているので“月給制の農家”なんですよ。厚生年金もありますし、パートさんでも交通費や休日手当が出る。そういう意味では一般企業のような感覚ですね(笑)。どんな作物を商品としてつくり、どうやって売っていくのか。そこを経営計画として検討していきます。たとえば、収穫した野菜は地元のスーパーマーケットなどの産直市に卸しているんですが、自分たちで値段をつけていくわけです。定番の野菜でも時期をずらすだけで、需要は大きく変わってくる。いいものをつくるのはもちろんですが、売り方を考えていくのも面白いですね。

 

独自路線の野菜づくりに活路を見出す

この土地の特長はどんなところですか?

土地

多美地区は山と山との間にあるとはいえ、平地との標高差が約900メートルという高冷地。普通の畑とは異なる時期の野菜づくりができる点がポイントですね。白菜だったら9月頃から収穫が可能になります。昼と夜との寒暖差が激しいため、葉に厚みが出てきますし、グッと甘さも増してくる。どうしても平地と同じ育て方はできないので、試行錯誤は必要になってきますが、ほかの農家さんと収穫時期が違うのは、それだけでアドバンテージになると思っています。

 

農業の苦労と喜びはどんなところですか?

近藤さん

何しろ自然が相手ですから、なかなか思いどおりにはいきません。それが最大の苦労ですね。一日として同じ日はありませんし、毎年変わる天候や気象にも気を配らなければいけない。「明日やろうは馬鹿野郎」という言葉がありますが、今日やるべきことを怠けてしまって先延ばしにすると、必ずしっぺ返しを食らいます(笑)。しかし、苦労した分、やっぱりお店から「もっと野菜を追加してくれ」と注文が来たり、お客さんから喜びの声が届いたときは嬉しいですね。

農業を続けていく秘訣は?

物事を短絡的に考えないこと。今の世の中、すぐに答えを出しがちですが、農業は人間の力だけではどうにもなりません。1年くらいでは何もわからないんですよ。日当たりや水はけ、土地と作物との相性もありますし、いろいろ試してみてわかることもいっぱいあるでしょう。うちだって経営が安定するまでは数年かかりましたし、今でも新しいチャレンジを幾つもしています。それこそ、周囲の農家さんから「あいつは農業が下手だ」なんて笑われたこともありますが、努力の成果として、春先につくるブロッコリーが安定して栽培できるようになりました。3年から5年くらいのスパンで、最終的にプラスになればオーケイという考え方が理想的ですね。

農家としての足腰を鍛えた上での挑戦を

近藤さん

これからやっていきたいこと、展開していきたい方向性は?

不安定な天候や異常気象、病虫害など、一つの作物だけに頼ると経営的には危ないと思うんです。そんな年でも収入が安定するように、できるだけ多くの種類をつくっているのですが、冬場の柱となるものがないので、そこを何とかしたいですね。野菜のカタログを見るとワクワクするんですよ(笑)。それから、全体のアベレージを底上げして少しでも廃棄処分になる野菜を減らすことが目標の一つかな。人それぞれ考え方はありますが、とびきり美味しい100点の野菜を追求するよりも、90点くらいの野菜が安定してできた方がいいと思っています。

新規就農を考えている方へメッセージをお願いします!

近藤さん

まず何よりも基本的な農業の型をしっかり身につけることです。たとえば、新規就農の方がいきなり無農薬で野菜をつくったり、変わった品種に手を出しても失敗するのが当たり前。農家としての足腰を鍛えて、ある程度の事柄や状況に対処できるようになってから、自分なりのスタイルを追求した方がいいと思います。頭の使い方次第できちんと利益を出していくことができますし、農業って本当に面白いんですよ。自分自身に誇りを持てる素晴らしい仕事です。

活用した補助事業

  • 攻めの農業実践緊急対策事業
  • 徳島県単独地域農業振興事業
  • 農の雇用事業

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