がんばる農業者紹介

【がんばる農業者紹介 No.6】高冷地で収穫する“サマールビー”の魅力

近藤 政志(こんどう まさし)さん

現住所:徳島県三好郡東みよし町
経営品目:いちご(夏秋・促成)・中玉トマト
経営面積:夏秋いちご(30a)、促成いちご(30a)、中玉トマト(10a)

腰を痛めずに農作業ができる高設栽培

就農のきっかけを教えてください

子どもの頃から家族で農業をしていたので、親の姿を見ながら自分も「大人になったら農業を」と考えていました。そのため、父の手伝いをしながら栽培技術を学び、農業大学校卒業と同時にアメリカのワシントンやカリフォルニアへ2年間の農業研修に行きました。日本とは農業の形態や方法も異なりますが、その頃に身についた農業全般の知識は、いろいろなところで役に立っているように思います。そして、研修を終えてから本格的に腰を据えて農業をスタートしました。

つくっている作物はどんなものですか?

いちご

今、栽培しているのは、夏から秋にかけて収穫する「夏秋いちご」と「中玉トマト」、冬から春にかけて収穫する「促成いちご」です。もともと夏から秋の時季には輸入物のいちごしかなかったんですよ。でも「国産のいちごが夏場にも欲しい」という需要が根強くあり、東みよし町の水の丸と呼ばれるこの地域では、30年ほど前に県の農業試験場で育成された夏いちごの「みよし」という品種から始まり、土地の特性を生かして「夏秋いちご」を生産するようになりました。他県でも栽培が増え、国産いちごの需要は増えていると実感しています。現在栽培している"水の丸高原いちごサマールビー"は、酸味のある爽やかな味わいが特徴で、ほぼすべてがケーキの材料として使われています。

いちご

独自の農法や工夫にはどんなものがありますか?

ハウス

農業といえば、どうしても過酷な作業のイメージがあると思いますが、今ではかなり楽になりました。たとえば「夏秋いちご」を育ててる温室では、高畝でつくる土耕栽培から腰を屈めずに立ったまま作業ができる高設栽培を行っています。"ベッド"と呼ぶ高台を設置し、培土にはココヤシの繊維を使っており、有機肥料などもほとんど使わないため、嫌な匂いはほとんど出ません。また、いちごが地面に触れないという衛生面のメリットもあります。

地域の農家全体で知識や技術を共有する

この土地の特徴はどんなところですか?

土地

水の丸と呼ばれるこの地域は、標高が約1,000メートルに達する高冷地です。平地と比べると、およそ6℃前後もの気温差があるといわれています。朝晩の寒暖差も大きいため、野菜や果物の味がギュッと濃くなり、美味しくなる環境なんですよ。特に「夏秋いちご」や「中玉トマト」の栽培には適していると思います。また、農業の知識や技術などを共有する風土が特徴だと言ってもいいかもしれません。ベテランが若手を指導したり、互いに助け合って、地域全体で収量をアップしていく・・・。そんな思いが強い土地だと思います。その証拠として、この3年間で、いちご農家として新規就農された方が3名も増えたんですよ。

農業の苦労と喜びはどんなところですか?

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苦労は天候や気象との戦いですね。標高が高い地域なので、もっとも恐ろしいのは台風と大雪です。異常な暑さや寒さも作物に大きな影響が出るので辛いですね。ただ、こればかりは人間の力で立ち向かうことができるものではないので、ある程度は仕方がないと割り切っています。一方の喜びは、いちごやトマトが思いどおりにできたときですね。もう5年ほど前になりますが、あるイベントで試食に出したトマトを一人の男の子が食べた時に、お母さんが「この子はトマトが大嫌いなのに・・・!」と驚いた出来事は、まだよく覚えています(笑)。

農業を続けていく秘訣は?

そんなに偉そうなことは言えませんが「無理をしないこと」ではないでしょうか。やっぱり農業って一朝一夕ではできないというか、いきなり結果を求めるのは違うと思うんです。それこそ、天候や気象の問題もありますし、どんなに手をかけても上手くいかないときもあります。そこでくよくよしても仕方ないんですよ。助け合いながら頑張っていけばいいと思います。

新規就農者にも門戸を開いている水の丸

これからやっていきたいこと、展開していきたい方向性は?

家族

家族の手作業でやっているため、大量生産はできませんが、イベントなどで販売するため、ほんの少しだけ「いちご大福」を作っています。もともとは自家用だったんですが、それを食べたお客さんから「これも売ってみたら?」と言われたことがきっかけで、好評をいただいています。いわゆるB品を廃棄しない工夫をずっと考えているんですが「夏秋いちご」や「促成いちご」をジャムやシロップなどに加工するのも面白そうです。うちだけで取り組むのでは無く、水の丸のいちご農家全体で力を合わせて、地域の名産品にできるといいですね。

いちご大福

新規就農を考えている方へメッセージをお願いします!

近藤さん

標高1,000メートルの水の丸は少し遠いところにありますが、ここでなければつくることができない作物もあります。生産者がお互いに助け合うことが当たり前になっている環境でもあることから、新規就農を考えられている方には入りやすい土地ではないかと思います。特にスタート時には"横のつながり"があるとないとでは大きく差が出るはずです。一緒に頑張りましょう。

 

 

活用した補助事業

  • 経営体育成支援事業(被災農業者向け)

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