就農現地見学会の報告 県北コース 2016年11月26日(土)

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徳島県では、新たに農業をスタートしようと考えている方や就農されて間もない方などを対象に、先進的な経営体や新規就農者の生産現場を実際に見学する『就農現地見学会』を開催しています。2016年11月26日には板野町のブルーベリー・ブロッコリー農家と松茂町のいちご農家を訪問。県内外から18名の方々が参加されたこのイベントの模様をお届けします。

見学先1

板野町 落合ブルーベリー園 石川五重さん

石川五重さん

経営概要

  • ブルーベリー、ブロッコリー(合計50a)
  • ブルーベリー狩り(7月中旬~8月中旬)、マルシェ(月1回)
  • 農産加工(ジャム・瓶詰加工業)
  • 労働力:本人・夫(週末のみ)・母

新規就農者の先輩の取り組みを知ろう

見学の様子 見学の様子

JR徳島駅を出発した後、徳島県農業大学校を経由して、18名の参加者が向かったのは、板野町の「落合ブルーベリー園」。笑顔で迎えてくれたのは、ブルーベリーをはじめとする作物をつくる石川五重さんです。高校の英語教諭だった石川さんは2015年の3月に退職。4月から就農したばかりという新規就農者の一人です。「ずっと“おばあちゃん子”だったので、いつかは農業をやってみたいという気持ちがありました」。親の高齢化や地域で耕作放棄地が増えてきたことから一念発起。青年就農給付金を活用し、農家としての新たなスタートを切りました。

見学の様子 見学の様子

親から受け継いだブルーベリー園と地域の方から借りた畑でブロッコリーを育てているという石川さん。7月中旬から8月中旬には予約制で観光ブルーベリー園も展開されていますが、私たちが訪れたときはブロッコリーを育てている真っ最中でした。「ちょっと遅めですが、11月24日に二度目の植え付けを行いました。初期の準備や出荷のための施設が必要ないため、新規就農者にはおすすめできる作物です」とのこと。徳島県でも力を入れている作物の一つであり、JAや地域の農業支援センターから熱心に指導も受けられるそうです。収穫したブロッコリーを見ながら、参加者たちは熱心に石川さんの説明に聞き入っていました。

見学の様子 見学の様子

見学の様子 見学の様子

また、石川さんは農園の広い敷地を活用して『いたの里山マルシェ』というイベントを定期的に開催。「ブルーベリーとブロッコリーの栽培に加えて、農園の取り組みを発信したり、地域のさまざまな人が集まる場所をつくっています」。月に一度のペースで開催されている同イベントは「買う人と作り手が直接、出合い、繋がる」「新鮮野菜と安心な食べ物」「自然に寄り添う丁寧な暮らし」「お金がローカルに回る小さなきっかけづくり」といった4つの目標を実現しようとするもの。少しずつ認知度も上がってきており、地域の人々の交流にも一役買っています。農業をベースに『いたの里山マルシェ』のようなイベントを積極的に行っていくパワフルな石川さん。これから農業を始めていこうとする参加者の方々も大いに刺激をもらったようです。

見学先2

松茂町 大住いちご園 大住真世さん

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経営概要

  • 施設いちご「さちのか」「紅ほっぺ」「おいCベリー」(30a)
  • いちご狩り(1月下旬~5月下旬)
  • 労働力:本人・父・母・姉

いちご農家のリアルな声を参考にする

見学の様子 見学の様子

板野町の「落合ブルーベリー園」の次に見学したのは、松茂町唯一のいちご農家である「大住いちご園」です。説明をしてくれたのは大住真世さん。もともと大住家は養鰻業を営んでいましたが、中国からの輸入鰻が多くなってきたことをきっかけに2009年にいちご農家へ転身。「輸入が難しく、国産品が求められるいちごならば…」とお父さまが決意されたということです。右も左もわからなかった初年度は、いちごが枯死する炭疽病で株が全滅するなど、とても苦労したそうですが、そこからの創意工夫によって、現在は『とくしま安2GAP農産物』の優秀認定を受けるまでに成長。農薬残留検査や作業者の衛生管理などの項目をクリアし、環境保全や労働安全などに配慮し、全力でいちごの栽培に取り組んでいると教えてくれました。

見学の様子 見学の様子

見学の様子 見学の様子

「大住いちご園」では、地面から高い位置に“ベッド”と呼ぶ高台を設置し、そこに深さ30センチほどの培土を入れたポットでいちごを育てています。いちごが地面に触れないため、そこから汚れたり、傷むということがなく、腰を屈めずに作業できるという利点があるそうです。「いちご栽培は“1年が13ヵ月”というほど手間がかかります。そこをどうクリアしていくかを考えなければなりません」と大住さん。実際「大住いちご園」では一粒一粒を丁寧にはさみを使って収穫するため、ピーク時には睡眠時間を削るほど忙しくなることもあるとか。そこで取り入れたのが「いちご狩り」です。お客さまに喜んでもらうと同時に、収穫と出荷の手間を軽減できる効果的な方法だと大住さんは話します。こうした現実的な一面を直接“現場の声”として知ることかできるのも、就農現地見学会のメリットの一つでしょう。

見学の様子 見学の様子

見学の様子 見学の様子

美味しいいちごをつくるには健康で強い株をつくる必要があります。「大住いちご園」では、保水力が高く、透水性に優れた土壌環境を整え、菌根菌が育つ土づくりを進めているそうです。こうした工夫に関する解説にも、参加者の方々は熱心にメモを取りながら深く頷いていました。また、強く健康な株をつくるための栄養素の葉面散布、受粉の方法など、参加者の質問にはすべて快く答えていく大住さん。たとえば「台風が来たらビニールハウスはどうするのか?」という質問に対しては「ビニールハウスは強風に弱いため、台風の予報が出たら家族で対策を協議しています。6月には収穫が終わっているので、ほとんど大丈夫なのですが、被害が想定されるときはビニールを外してしまいます。基本的には1年ごとに張り替えですね」とのこと。その費用も見ておく必要があると教えてくれました。栽培の苦労が大きい分、お客さまの喜ぶ顔が嬉しいと大住さん。作物とアプローチが異なる農家を1日で2ヵ所回る就農現地見学会。参加者の方々はどのような感想を抱いたのでしょうか。

参加者の声1

氏名:市原賦之さん
年齢:30歳代
職業:農業
住所:徳島県勝浦郡勝浦町

自分の農業経営に役立つと感じました

市原賦之

県外で別の仕事をしていたのですが、たまたま「青年就農給付金」という制度の存在を知り、地元へ戻って農業をしたいと思うようになったのが農業を始めようと思ったきっかけです。就農現地見学会は勝浦町役場の産業交流課から案内が届いて知りました。どちらの農家の方々も、栽培方法や出荷作業をはじめ、いろいろと経営について考えていることがわかり、参加して良かったと考えています。特に失敗談や改善策はリアルな声ですし、そこは大変参考になりました。ブログやFacebookでマルシェなどの活動を宣伝していたり、いちご狩りを行うことで収穫・出荷調整の労働力を削減している点は見習っていこうと思っています。

 

 

参加者の声2

氏名:金喜勝美さん
年齢:30歳代
職業:農業
住所:徳島県徳島市多家良町

失敗を恐れずに挑戦する姿勢を見習って

金喜勝美さん

就農現地見学会を知ったのは農業支援センターの案内です。農業に従事している両親が高齢になりつつあること、TPPをはじめとして農業に関する事柄が注目を集めていることから、今までの社会人としての経験から“儲かる農業”を実現していきたいと思って応募しました。最初の「落合ブルーベリー園」の石川さんは、とても農業を楽しんでいる印象です。周囲の人に教えを請いながら失敗を恐れずにさまざまなことに挑戦する姿勢は見習っていきたいですね。次の「大住いちご園」は養鰻業から初期投資が必要な施設野菜に挑戦したこと自体、すごい決断だと感銘を受けました。私もいちごの生産安定を図り、法人化・観光農園化を目指そうと思います。調理師としてのキャリアなど、自分の強みを生かした農業経営に取り組むつもりです。

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