就農現地見学会の報告 県南コース 2016年11月25日(金)

バス内

徳島県では、新たに農業をスタートしようと考えている方や、就農されて間もない方などを対象に、先進的な経営体や新規就農者の生産現場を実際に見学する『就農現地見学会』を開催。2016年11月25日には県内外から多くの参加者が集まり、阿南市の施設きゅうり農家と施設トマト法人を訪問しました。その様子をダイジェストでお伝えします。

見学先1

阿南市・施設きゅうり農家 小西稔彦さん

経営概要

  • 施設(1800平方メートル・9棟)
  • 促成きゅうり
  • 労働力:本人・妻・両親

成功者の技術と経験を、いかに吸収できるか

最初に参加者が向かったのは、阿南市の促成きゅうり農家・小西稔彦さんのハウス。脱サラ後に夫婦で就農給付金を受給し就農されたという経歴の持ち主です。県の新規就農チューター支援事業により指導農業士から技術を学ぶなど、意欲的な取り組みによって安定した栽培を続けています。

小西稔彦さん

小西さんは就農するにあたり、地元のきゅうり農家のもとで約2年半にわたって修行。きゅうり栽培のプロが持つ技術や経験を吸収した後、自らの手できゅうり栽培用のハウスを作りました。

「なるべくコストを抑えるために、ビニールの加工から配水管の工事まで、自分でできることは全部やりました。ハウスを新築すると、1反あたり約1千万円の予算が必要になります。うちの場合は2反半で1千万円以内に抑えました。業者任せにしていては、独立するまでのコストが掛かりすぎるからです。農家の儲けは、最初に掛かった費用を払い終わって初めて出てくるもの。だからこそ、その費用を極力抑えることが大切です」

見学の様子

自らが手掛けたハウスで、順調に収穫量を伸ばす小西さん。自分の力を過信することなくゼロから農業に取り組み、何でも相談できる地域の農業者を見つけることでリスクを減らす姿勢は、就農を目指す参加者にとって大きな教訓になったことでしょう。

見学先2

阿南市・あなんトマトファクトリー株式会社 代表取締役 大村哲司さん

経営概要

  • 施設トマト(1.4ha)大玉トマト
  • 低コスト耐候性ハウスと養液栽培施設、複合環境制御施設を導入した生産技術高度化施設

出荷先や価格を把握し、新たな販路開拓へ

次に参加者たちが向かったのは、阿南市で大規模なハウストマト栽培を行う農業法人「あなんトマトファクトリー」です。設立は2014年2月。『アトラスハウス』と名付けられた耐候性ハウスによって、収穫以外のほとんどをコンピューター制御で行う「スマート農業」を実践しています。トマトの種類も味がギュッと詰まった「グラン・ロッソ」や、黄色い実が特徴的な「阿南ゴールド」など多種多様。今回のナビゲーターを務める代表取締役の大村哲司さんの言葉には、これまでの商売で培った経営哲学が凝縮されていました。

見学の様子

「皆さんがいるこのハウスは、徳島大学と徳農種苗、アグリベストとの産学官連携によって開発した『アトラスハウス』です。軒高が3.5メートルと高く、骨組みの間隔も広いため採光性が高いのが特徴です。風に強いダブルアーチ構造を採用しています。養液栽培の方式をとっており、ホウ素やマンガン、ミネラルなどを含んだ養液をコンピューター制御によって与えています」

見学の様子

同社のハウスの総面積は4,320平方メートル。栽培面積は1.4ヘクタールにも及び、一企業としては県内最大規模を誇っています。特徴的なのが、環境制御装置の活用による省力化です。「コンピューターに基本的なスケジュールを打ち込んでおけば、ベテラン農家の方が作るトマトと同様もしくは、それ以上の品質のものを作ることができます」と大村さんは言います。

見学の様子

「徳島のトマトの平均収量は1反あたり18トンですが、弊社の昨年の収量は20トンに達しました。今年の目標収量は1反あたり25トン、総収量にして320トンを目指しています。それを達成するために必要な要素の一つが、人員の確保です。すでに外国人技能実習生や新規学卒の若手も仲間に加わっており、定期的なミーティングを行うことで問題点を改善し、さらなる収穫量アップを目指しています」

熱心にメモをとる参加者を前に「僕は、売れるトマトを作りたい」と目を輝かせる大村さん。そのために必要なのは、自分のトマトの行き先や、その価格をしっかりと把握することだと言葉に力を込めます。

大村哲司さん

「弊社から出荷しているトマトは、関西の百貨店や大手スーパーなどで販売されています。徳島のスーパーでは350円で売られているものが、向こうでは1000円の値を付けることもある。そういった状況を把握することが、新たな販売ルートの開拓にもつながる。品質の良い商品を、いくらでどこに売るかを考えることで、農業はもっと面白くなると思います」と大村さん。その後もさまざまな経営ノウハウを、しっかりと参加者に伝えていました。

参加者の声1

戎居美佳さん

氏名:戎居美佳さん
年齢:20歳代
職業:農業
住所:徳島県鳴門市

現在は、青年就農給付金を活用し鳴門でいちごの栽培を行っています。いちご狩りをはじめ、直売や出荷なども行っています。いちご以外の作物でどのような栽培方法があるのかを勉強してみたいと思い、この度の就農見学会に参加させていただきました。

まず小西さんの施設きゅうりですが、普通の畑よりも“うね”を高く作り、根が深く張るように工夫されていたり、水やりも葉やつるを直に触って水分量が足りているかを確かめたりと、独自の工夫を凝らされているのが印象的でした。毎日農地に足を運び、その日の苗に合わせて栽培することが大切なんだなって。また、困ったときに相談が出来る方を見つけておくことの大切さも学ぶことができて良かったです。

戎居美佳さん

大村さんのトマト施設は、まず規模の大きさに驚かされました。すべてコンピューターでデータ化し、成長の度合いを確認できるようになっていました。できるだけたくさんのバイヤーに出会い、高値で売れるように交渉することが重要だというお話も勉強になりました。今日学んだことを実践することで、売上向上につなげていきたいと思います。

参加者の声2

簑手宏紀さん

氏名:簑手宏紀さん
年齢:30歳代
職業:農業
住所:徳島県徳島市

現在は青年就農給付金を受給しながら、農業を行っています。夏は施設野菜でトマトを作り、秋から春にかけては露地野菜でブロッコリーを作っています。今回は、徳島でも最大規模を誇る施設でのトマト栽培を行っている「あなんトマトファクトリー」の施設見学ができるということもあり、ワクワクしながら参加させていただきました。

最初に訪れた施設きゅうり農家の小西さんは、農業を始めるに至って大事な事は農業を教えてくれる人を見つける事であり、それに加えて「利益をあげている人」に教えてもらう必要があるという話をしてくださいました。分からない事だらけの農業を始めるには、恥を承知で聞く勇気がいることを再認識することができました。

簑手宏紀さん

あなんトマトファクトリーさんの施設は想像以上に大きく、自分の農業とはあまりにもかけ離れた感覚でのお話でしたが、新しい事を始めるに至っては地元の農家さんとの「つながり」を作る事が一番とのお話が印象的でした。それぞれの農家さんのお話は全てが新鮮で、今後生かせられると思った部分も多くありました。これを機会に、自分の農業をもう一歩先に進めたいと思います。

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