がんばる農業者紹介

【がんばる農業者紹介 No.10】明確な目標を持って努力する姿勢が結果を生む。

浅樋真一さん

浅樋真一(あさひ しんいち)さん

現住所:徳島県徳島市多家良町
経営品目:いちご
経営面積:ビニールハウス5棟(20a)

人間らしい生き方の体現として農業をスタート

就農のきっかけを教えてください。

浅樋真一さん

実家の家業も農家ではありませんし、いちご農家を始めるまでは、農業に縁も所縁もありませんでした。もともとはガソリンスタンドで働いていたんですよ。でも、人手不足や長時間労働など「このままでいいんだろうか?」と感じる問題が少しずつ積み重なってきて。会社に勤めるのではなく、自分の取り組み次第で結果が変わってくる農業だったら「人間らしい生き方ができるんじゃないか…」と考えるようになったんです。そこで2008年に会社を辞めて、2010年から新規就農という形で農業をスタートしました。

つくっている作物はどんなものですか

いちご

“さちのか”という品種のいちごをビニールハウスの高設栽培で育てています。徳島県内のいちご農家の約9割近くは、この品種をつくっているのではないでしょうか。最大の特徵は甘さと酸味のバランスが優れていること。とても後味が良いため、ついつい「もう一つ…」と手を伸ばしたくなるおいしさが、幅広い年代の人々から支持されています。

独自の農法や工夫にはどんなものがありますか

いちご

もう数年前のことですが、ベテランの農家さんと自分のところを比べると、どうしても収量の差が縮まらないことがありました。そこで温湿度測定機械を導入して、ビニールハウス内の温度や湿度、日射量を測ってみたところ、けっこうベテランの農家さんの数値と違ったんですね。うちはビニールハウスが県内でも最大級のサイズということもあり、中心と端とでは温度や湿度にもかなりの差が出てきます。こうした部分をデータを見ながら改善していった結果、いちごの収量が大幅に増え、所得の改善へとつなげることができました。この経験を平成27年度にアグリクラブ徳島でプロジェクトの一つとして発表したところ、中四国の大会を勝ち抜き、全国大会へと進出しています。また、できるだけ粒を揃えるため、出荷作業で使うスケールも1グラム単位でわかる機械を導入。ケーキなどのスイーツで使う場合には特に喜ばれています。

一つひとつの経験を積み重ねていく大切さ

この土地の特長はどんなところですか

ビニールハウス

徳島県の南部に位置する多家良町は、県内でもいちご農家が多い地域の一つだと思います。でも、いちごを栽培するからこの土地を選んだわけではないんですよ。新規就農するにあたって、いろいろなところで畑を探していたところ、たまたま見つかったのが多家良町の土地だったんです。土地が決まるまでは、結局1年近くはかかったと記憶しています。実は最初からいちご農家をやろうと考えていたわけではなくて…。自分が用意できる資金の兼ね合いもあり、広い面積の畑を借りることが難しかったんです。そう考えると、やはりビニールハウスで栽培できる作物がベストになるため、いちごを選んだというわけなんですよ。このあたりはあまり水はけが良いとはいえない土地ではありますが、逆に考えれば「湿度を保ちやすい環境」でもあります。自分が作物を育てる土地については、そういう点も知っておいた方がいいと思います。

農業の苦労と喜びはどんなところですか

いちご

私にとっては、天候不順などで収量が落ち込んだりするのは、それほど大きな問題ではありません。自然相手の仕事なので、そういう点でガッカリしても仕方のないことだと思うんです。むしろ、いろいろな課題に対して、一つひとつの方法を試していくことが楽しいですね。結果がどちらに転んでも、必ず次につながりますから。努力を続けていれば、すぐに結果が見えなかったとしても、5年後、10年後には必ず何らかの成果が出てくるものです。浅樋いちご農園の収益がずっと右肩上がりで推移しているのも、そういうチャレンジを繰り返してきた結果だと考えています。

農業を続けていく秘訣は?

経営意識の高い農家の方々と交流すること。つくっている作物や経営の方向性などは異なりますが「いいものをつくりたい」という思いは共通しているはず。その意味では仲間でもあり、ライバルでもありますから、会って話をする度に良い刺激をもらうことができています。年齢は関係ないですね。上の方もいれば、下の方もいらっしゃいます。やはり努力されている方々の話を聞くと「自分も負けてはいられない」と、農業に対するモチベーションも上がります。

「儲かる農業」「休める農業」を目指して

これからやっていきたいこと、展開していきたい方向性は

いちご

「アグリクラブ徳島」という組織の会長をしています。日本中、どこの地域もそうですが、徳島も農業の後継者は非常に少ない状況です。高齢化や過疎化が進むなか、ほかの地域との連携や協力も途絶えがちになっており、決して楽観視はできません。ですから、まずは後継者や新規就農者を増やしていく努力をしていきたいと考えています。アグリクラブ徳島では、ここ1年で定例会の参加者を常時10名程度まで増やすことに成功しました。10名と言うと少ないと思われるかもしれませんが、ほかの地域と比べると、かなり多い数字だと思います。農家の経営安定ということをテーマとして、さらに力を入れていきたいですね。

※農業青年クラブ:若い農業者により結成され、農業者としての資質の向上や、よりよい農村・農業を創ることを目的として活動している。全国の都道府県に存在し、全国・地方ブロック(中四国など)・各県・各地区・各単位(市町村)という階層で組織されている。

※アグリクラブ徳島:徳島農業支援センター管内の青年農業者で組織される、徳島地区の農業青年クラブ

新規就農を考えている方へメッセージをお願いします

浅樋真一さん

農業といえば「大変だけれど儲からない…」「自然相手で休めない…」というイメージがあるかもしれません。でも、私が目指しているのは「儲ける農業、休める農業」。そのためには、ただ作物をつくって売るだけでは駄目なんです。また「品質の良い作物だったら、高く売れるだろう」という考えも通用しません。今の時代「品質の良いもの」は当たり前ですから、それをどのように販売していくかというイメージ戦略も必要です。大切なのは、明確に目標を持ち、常に努力していくこと。自分が頑張れば、頑張っただけの結果がついてくる仕事が農業です。ちゃんと儲かる仕事だということも外へアピールしていきたいですね。そうしなければ「農業をやりたい」という後継者も育たないですから。後に続く人たちのためにも頑張ろうと思います。

活用した補助事業

カテゴリー